Microsoft Foundry Agent Serviceは長期Memoryを公開プレビューで提供している。会話から情報を抽出し、重複や矛盾を統合し、後続セッションで検索して再利用する。user profile、chat summary、procedural memoryの三種類を扱い、項目単位の作成・読取・更新・一覧・削除、store単位の既定TTL、直接remember-or-forgetを利用できる。
便利な個人化機能だが、会話履歴を長くするだけではない。モデルが抽出・統合した情報が独立した永続データになるため、同意、訂正、削除、保持期間を製品機能として設計する必要がある。
何が変わったか
管理型Memory Storeに、個別memory itemのCRUD、store作成時の既定TTL、ユーザー要求を即時反映するremember-or-forgetが追加された。セッション、端末、workflowをまたぐ継続性を構築できる。
変更前後の差
| 項目 | 会話履歴のみ | Foundry Memory |
|---|---|---|
| 保持単位 | メッセージ | 抽出・統合されたmemory item |
| 範囲 | セッション中心 | セッション横断 |
| 種類 | 生の会話 | profile・summary・procedural |
| 削除 | 会話単位 | item単位CRUD |
| 保持 | アプリ実装 | default TTL |
| 変更 | 明示編集 | consolidationで変化する可能性 |
誰に影響するか
顧客の嗜好、アレルギー、言語、業務手順、過去相談を記憶するエージェントに影響する。法務、人事、医療、金融、子ども向けサービスでは、保存してよい情報の範囲を特に厳しくする必要がある。
期限
強制期限はない。プレビュー機能であり、動作や価格が変更される可能性がある。Microsoftは基盤となるchat・embedding model利用を課金対象として案内している。
必要な対応
memory typeごとに目的、法的根拠、保持期間、閲覧者を定義する。default_ttl_seconds=0は無期限を意味する。TTLサポート導入前に作られたstoreには適用されない条件があるため、既存storeを別途確認する。
実装・移行手順
- 保存を許可する属性と禁止する属性を分類する。
- user profile、chat summary、procedural memoryを用途別に有効化する。
- store作成時に0以外の既定TTLを設定する。
- ユーザーがmemoryを閲覧・訂正・削除できるUIを用意する。
- 明示的なremember-or-forget要求を同期処理する。
- extraction、consolidation、retrievalの監査イベントを記録する。
- personalizationなしでも動くfallbackを用意する。
- preview変更に備えてexportまたは再構築手順を確認する。
失敗しやすい点
TTL 0を即時削除と誤解する、既存storeにも新TTLが自動適用されると考える、生の会話削除だけで抽出memoryも消えたと判断する、consolidationされた誤情報をユーザーが訂正できないことが問題になる。
リスク
センシティブ情報の抽出、誤った記憶による継続的な誤回答、削除漏れ、ユーザー間の識別子混同、プレビュー仕様変更、embedding・chat費用増加がある。memory検索結果を権威ある事実として扱わず、重要判断では再確認する必要がある。
評価方法
- 同意なしで作成されたmemory件数
- TTLなしstore数
- 削除要求から検索不能になるまでの時間
- 誤記憶の訂正成功率
- ユーザー間memory混入件数
- personalizationの品質改善
- memory取得によるトークン・費用増加
- memory無効化時のタスク成功率
ロールバック
Memory search toolをエージェントから外し、新規抽出を停止する。既存storeは読み取り専用にしてexport・削除範囲を確認し、短期会話状態だけの構成へ戻す。ユーザー削除要求はロールバック中も継続処理する。
編集部分析
長期memoryは回答品質の機能であると同時に、独立した顧客データベースである。モデルが自動で情報を要約・統合するため、通常の会話ログより訂正可能性が重要になる。記憶できることではなく、忘れられることを先に検証すべきだ。
実務チェックリスト
- [ ] memoryの利用目的と同意を定義した
- [ ] 保存禁止属性を実装した
- [ ] default TTLを0以外で設定した
- [ ] 既存storeのTTL適用状況を確認した
- [ ] item単位の閲覧・訂正・削除ができる
- [ ] remember-or-forgetを同期反映する
- [ ] Memoryなしのfallbackを試験した