Microsoft FoundryのToolboxesは、Agent toolを共有・version管理する仕組みである。tool searchを有効にすると、全tool定義を最初からmodelへ渡さず、必要な機能をturn中に検索して呼び出せる。context削減と引き換えに、検索精度と版管理が新しい運用対象になる。
何が変わったか
FoundryのToolboxは、Web Search、MCP、Work IQなどのtoolを共有資産としてまとめ、immutableなversionで管理できる。新しいversionを作っても自動的にdefaultへ切り替わらず、明示的なpublishで昇格するため、評価後に本番へ出せる。
toolbox_search_previewを入れると、通常のtool定義は最初のtools/listから隠れ、modelにはtool_searchとcall_toolというmeta-toolだけが見える。modelは自然言語で必要な機能を検索し、そのturn中だけ該当toolを呼び出せる。
変更前後の差
| 項目 | 全toolを直接公開 | Toolbox + tool search |
|---|---|---|
| 初期context | tool定義が増えるほど肥大化 | meta-tool中心で小さい |
| tool発見 | modelが全一覧から選択 | 自然言語検索で候補取得 |
| 共有 | Agentごとに定義 | Toolbox versionを共有 |
| 更新 | 直接変更で即影響 | immutable versionを作成 |
| 本番切替 | Agent再設定 | default versionをpublish |
| rollback | 手動で定義を戻す | 旧versionを再publish |
誰に影響するか
数十以上の業務toolや複数MCP serverをAgentへ与える組織、同じtool群を複数Agentで利用するチーム、tool定義によるcontext消費や誤選択に悩むシステムに影響する。toolが数個しかないAgentでは、検索層を追加することで遅延や失敗点が増える可能性がある。
期限
強制移行期限はない。Toolboxesとtool searchはPreviewを含むため、既存Agentの全toolを一括移行せず、tool数が多いAgentから比較する。
必要な対応
Toolboxを技術単位ではなく利用意図で分ける。例えば「ソースコード管理」「顧客対応」「社内予定」のように、検索語が明確になる粒度にする。各toolへ説明と検索用語を付け、重要toolはpinを検討する。MCP接続の承認設定をneverへ安易に固定せず、読み取り・更新・削除で要求する承認を変える。
Agentはdefault versionへ追従するか、特定versionへ固定するかを明示する。
実装・移行手順
- 現行Agentのtool定義と実利用率を収集する。
- 同じ目的のtoolをToolboxへまとめ、説明と所有者を設定する。
- 新versionへ
toolbox_search_previewを追加する。 - 代表課題で検索語、返るtool、誤選択、未発見を記録する。
- 重要toolをpinし、追加検索文を調整する。
- version固有endpointで
tools/listを確認する。 - 合格したversionだけdefaultへpublishし、旧versionをrollback用に保持する。
失敗しやすい点
一つの巨大Toolboxへ無関係なtoolを詰め込む、説明文を製品名だけにする、tool searchが返したtoolを無条件承認する、新version作成直後にdefaultになったと誤認する、Agentがdefault追従かversion固定かを把握しないことが問題になる。
リスク
誤ったtool発見、更新系toolの無承認実行、default version切替による複数Agent同時回帰、検索結果に現れない重要tool、MCP接続の認証不備がある。初期contextが減っても、検索回数とtool callが増えれば総遅延・token消費が悪化する場合がある。
評価方法
- 課題ごとの正しいtool発見率
- 不要toolの候補出現率
- tool search回数と追加遅延
- tool call成功率・承認拒否率
- Toolbox versionごとの回帰成功率
- default切替後の影響Agent数
- 旧versionへのrollback時間
- 初期context token削減量
ロールバック
問題があるversionを削除する前に、以前のversionをdefaultへ再publishする。Agentが特定versionへ固定されている場合は参照先を戻す。tool search自体が原因ならtoolbox_search_previewを含まないversionへ切り替え、重要toolだけを直接公開する。
編集部分析
tool searchは大量tool問題を解決するが、権限問題を解決する機能ではない。modelが見る定義を遅延取得しても、最終的に呼べるtoolの権限はToolbox側に残る。検索精度、承認、version昇格を一つのリリース工程として管理することで初めて安全に使える。
実務チェックリスト
- [ ] Toolを利用意図ごとに分割した
- [ ] 説明と検索語を実務表現で記述した
- [ ] 更新・削除toolの承認を設定した
- [ ] version固有endpointを検証した
- [ ] 正しいtool発見率を評価した
- [ ] default publishの承認者を決めた
- [ ] 旧versionへのrollbackを試した