GoogleはGemini APIで提供しているGemini 2.5系の主要モデルを2026年10月に停止する。
最初の期限は10月2日のgemini-2.5-flash-imageである。続いて10月16日にgemini-2.5-pro、gemini-2.5-flash、gemini-2.5-flash-liteが停止する。
移行先はGemini 3系だが、公式表では一部の代替がPreviewモデルになっている。GAモデルからPreviewへ移る場合、モデル品質だけでなく、変更頻度、停止予告、契約上の扱い、本番SLAを再評価する必要がある。
停止対象と推奨移行先
2026年7月12日時点の公式廃止予定は次の通りである。
| 停止モデル | 停止日 | 推奨移行先 |
|---|---|---|
gemini-2.5-flash-image | 2026年10月2日 | gemini-3.1-flash-image-preview |
gemini-2.5-pro | 2026年10月16日 | gemini-3.1-pro-preview |
gemini-2.5-flash | 2026年10月16日 | gemini-3.5-flash |
gemini-2.5-flash-lite | 2026年10月16日 | gemini-3.1-flash-lite |
Googleは廃止表の日付を「最も早く停止される可能性がある日」と説明し、正確な停止日は利用者へ事前通知するとしている。実務では表の日付を最終期限として扱い、延長を前提にしない。
一つの移行プロジェクトにまとめない
4モデルは用途が異なる。
- Proは高難度推論、長文、複雑なエージェント
- Flashは速度と性能の均衡
- Flash-Liteは大量・低コスト処理
- Flash Imageは画像生成・編集
同じ「Gemini 2.5終了」でも、評価方法、担当部門、障害影響が違う。移行をモデル単位ではなく、ワークロード単位へ分解する。
customer-support-chat -> gemini-2.5-flash
invoice-classification -> gemini-2.5-flash-lite
contract-analysis -> gemini-2.5-pro
creative-image-edit -> gemini-2.5-flash-image
一つのモデルIDを全システムで置き換えると、低コスト処理まで高価なモデルへ移る、または高難度処理が軽量モデルへ落ちる可能性がある。
GAからPreviewへ移る問題
Previewは性能評価だけでは不十分
Previewモデルは一般に、GAモデルより変更や終了の可能性が高い。公式の廃止表でも、PreviewにはGAとは異なる寿命が設定されている。
本番採用時に確認する。
- SLAの対象か
- データ処理条件は同じか
- リージョン制約があるか
- レート制限が安定しているか
- モデルIDが固定できるか
- 自動更新されるか
- 終了通知の期間
- Provisioned Throughput相当の契約が可能か
- 障害時の代替モデル
品質が高くても、契約上の安定性が要件を満たさない場合、本番の主経路にできない。
Previewを隔離する
Preview採用時は、アプリケーションから直接モデルIDを呼ばず、ルーティング層を置く。
production-policy: contract-analysis-primary
-> current: gemini-3.1-pro-preview
-> fallback: approved-secondary-model
モデルID、Prompt、ツール、評価セットを同じリリース単位で管理する。Previewが更新された場合、モデルだけが黙って変わらないようにする。
Pro移行で評価すること
gemini-2.5-proからgemini-3.1-pro-previewへ移る場合、長文処理と推論タスクを中心に確認する。
- 長いコンテキストで重要情報を保持できるか
- 指示の優先順位
- 引用の正確性
- 数値・契約条件の抽出
- 複数文書の矛盾検出
- Tool Callの選択
- Tool引数の構造
- JSON Schemaへの適合
- 思考時間とレイテンシー
- 入出力トークン量
- 安全拒否率
平均正解率だけでなく、重大な誤りを個別ゲートにする。
契約金額の誤抽出: 0件
存在しない条項の引用: 0件
無許可ツール実行: 0件
個人情報の不要出力: 0件
Flash移行で評価すること
gemini-2.5-flashからgemini-3.5-flashへの移行では、速度とコストの分布を見る。
- P50、P95、P99レイテンシー
- 最初のトークンまでの時間
- 出力長
- キャッシュ利用
- 1リクエスト当たりの総トークン
- 429率
- タイムアウト率
- 再試行後の成功率
- Tool Call回数
- 同じ品質を得るための再質問回数
単価が低くても、出力が長くなる、再試行が増える、人間確認が増える場合、総費用は上がる。
Flash-Lite移行で評価すること
大量処理では小さな差が月間費用へ大きく影響する。
代表的な評価対象は次である。
- 分類
- 情報抽出
- 要約
- ルーティング
- モデレーション補助
- メタデータ生成
- バッチ処理
正解率だけでなく、誤分類の費用を重み付けする。
cost = API費用
+ 再処理費用
+ 誤分類による業務損失
+ 人手確認
軽量モデルの移行では、1%の精度差が数百万件へ拡大する。
Flash Image移行で評価すること
画像モデルは最初の期限が10月2日であり、テキスト系より早い。
比較する項目は次である。
- 画像生成と編集のAPI形式
- 入力画像の扱い
- 画像サイズ
- アスペクト比
- 日本語文字
- 商品・人物の一貫性
- 安全判定
- 拒否理由
- 生成時間
- 料金
- 再生成率
- 承認率
- メタデータと透かし
画像の品質は主観評価になりやすい。代表Promptを固定し、採用率、修正率、再生成回数を記録する。
Prompt互換性を過信しない
同じPromptを新モデルへ送れば同じ結果になるとは限らない。
モデル世代が変わると次が変化する可能性がある。
- 指示への忠実度
- 冗長性
- JSONの厳密さ
- Tool Callの積極性
- 安全判定
- 長文中の注意配分
- 画像理解
- 多言語表現
- トークン化
Promptをそのまま維持することではなく、業務要件を維持することが目的である。
ツールとエージェントの移行
Geminiをエージェントへ組み込んでいる場合、単発回答より影響が大きい。
確認する。
- Function Callingのスキーマ解釈
- 並列Tool Call
- Tool Callの最大回数
- 無限ループ
- 途中状態の保存
- 長時間処理
- 再試行
- 人間承認
- 検索結果の引用
- Computer Useまたは外部操作
モデルが賢くなるほどツールを積極的に使い、権限範囲を超える可能性もある。新モデルへの移行時は、ツール権限を一時的に読み取り専用へ下げて評価する。
段階移行
1. 利用台帳を作る
モデルID、プロジェクト、APIキー、リージョン、月間量、所有者、業務重要度を一覧化する。
2. 用途別に移行先を決める
公式推奨を出発点にしつつ、SLA、Preview可否、費用、地域条件を確認する。
3. 評価セットを固定する
通常例だけでなく、境界例、過去障害、セキュリティ例、長文、異常入力を含める。
4. シャドー実行する
本番入力を匿名化または許可された範囲で新モデルへ送り、旧結果と比較する。副作用のあるTool Callはモック化する。
5. 一部トラフィックを切り替える
1%、5%、20%、50%、100%のように段階的に増やす。モデル別だけでなく、顧客層、言語、業務種類で偏りを確認する。
6. 切り戻し条件を定義する
- 重大誤答が1件でも発生
- P95遅延が基準超過
- 429率が一定以上
- Tool Call失敗率が増加
- 単位業務当たり費用が上限超過
問題発生後に判断するのではなく、事前に数値化する。
移行スケジュール
| 時期 | 対応 |
|---|---|
| 直ちに | 全モデル利用を棚卸し |
| 7月中 | 代替候補、Preview可否、契約条件を確定 |
| 8月 | 評価セットとシャドー環境を構築 |
| 9月上旬 | Flash Imageを優先して段階移行 |
| 9月中旬 | Pro、Flash、Flash-Liteの本番切り替え開始 |
| 9月25日まで | Flash Imageの旧モデル通信をゼロにする |
| 10月上旬 | 残るGemini 2.5通信をゼロにする |
| 10月16日 | 監視とフォールバックを確認 |
公式停止日当日の切り替えを避ける。Prompt調整、権限審査、顧客告知の時間を確保する。
編集部分析
今回の終了で注目すべきなのは、Gemini 2.5という一世代のモデルがまとめて置き換わることと、移行先の成熟度が用途ごとに異なることである。
企業は「新しい世代だから一律に優れている」という前提を置くべきではない。Pro、Flash、Lite、Imageは、性能、費用、安定性の異なる製品である。移行判断はモデルファミリーではなく、業務単位で行う必要がある。
また、GAからPreviewへの移行が必要なワークロードでは、技術評価と契約評価を分離してはいけない。ベンチマークで高得点でも、短い通知期間や強制更新が許容できなければ、本番基盤として不適切である。
モデル終了への耐性を高めるには、モデル名をコードへ埋め込まず、用途名を内部ポリシーへ定義する。
high-accuracy-contract-analysis
low-cost-batch-classification
real-time-customer-chat
commercial-image-editing
この用途名から承認済みモデルへルーティングすれば、次回の世代交代でも業務コードを変更せずに移行できる。
実務チェックリスト
- [ ] Gemini 2.5系の利用箇所を全プロジェクトで検索した
- [ ] 10月2日と10月16日の期限を分けて管理した
- [ ] 用途ごとに移行先を決めた
- [ ] Previewモデルを本番利用できる契約条件か確認した
- [ ] Prompt、構造化出力、Tool Callを回帰試験した
- [ ] トークン量、遅延、429、再試行を比較した
- [ ] 画像の採用率と再生成率を評価した
- [ ] エージェントの権限を下げて移行試験した
- [ ] シャドー実行と段階的トラフィック移行を行った
- [ ] 数値化した切り戻し条件を設定した
- [ ] モデルIDを内部用途ポリシーから分離した
- [ ] 公式停止日前に旧モデル通信をゼロにした