Cloudflare Workers AIのMarkdown Conversionは、Markdown記法を除いたplain textを返せるようになった。既存出力は変わらないが、textへ切り替えるとRAGの見出し、表、link構造が失われる可能性があり、token削減だけで判断してはいけない。
何が変わったか
Workers AIのMarkdown Conversionへoutput.formatが追加され、markdownまたはtextを選べる。textではMarkdown syntaxを除いたplain textが返り、結果オブジェクトのformatもtextになる。既定はmarkdownのため、既存呼び出しの出力は変わらない。
AI bindingではconversionOptions.output.format、REST APIではmultipartのconversionOptionsへ指定する。
変更前後の差
| 項目 | markdown出力 | text出力 |
|---|---|---|
| 既定 | 既定値 | 明示指定が必要 |
| 見出し | #等で構造を保持 | 記法を除去 |
| link | URL・label構造を保持しやすい | 表示文字中心になる可能性 |
| 表 | Markdown tableとして保持 | 行列構造が弱くなる |
| token | 記法分を含む | 短くなる可能性 |
| RAG | section chunking向き | 単純全文検索・分類向き |
誰に影響するか
Webページや文書をRAG corpusへ投入するpipeline、全文検索用index、promptへ直接文書を渡すAgent、Markdownを表示しない分類・感情分析処理に影響する。見出し単位のchunkingや表の意味を重視する用途では、text出力へ変えると情報量が落ちる可能性がある。
期限
強制移行期限はない。既定値はmarkdownのままで、既存pipelineは変更されない。text出力は新しいoptionとして、用途ごとに比較してから採用する。
必要な対応
変換後の用途を「構造を使う処理」と「文字列だけを使う処理」へ分ける。RAGでは見出し、表、link、listを検索・引用へ使っているか確認する。textへ切り替える場合も、元ファイル名、page、section、source URLなどのmetadataは別に保持する。変換formatをindex versionへ含め、同じcorpusへmarkdownとtextを混在させない。
実装・移行手順
- 代表文書としてHTML、PDF、表、箇条書き、linkを含む評価セットを作る。
- 同じ入力を既定markdownと
output.format=textで変換する。 - 文字数、token数、見出し・表・URL保持率を比較する。
- 同じchunk sizeとembeddingで検索精度を比較する。
- 引用回答で元sectionを復元できるか確認する。
- pipeline設定へformatとversionを記録する。
- 合格した用途だけtextへ切り替え、既存indexは別versionとして保持する。
失敗しやすい点
text出力を「内容が同じで記号だけ少ない」と考える、表やlinkの消失を評価しない、既存embedding indexへ異なるformatを追加する、結果のformatを確認しない、conversion optionをbindingとRESTで異なる場所へ指定することが問題になる。
リスク
見出し境界の消失、表の列関係崩壊、引用URLの欠落、chunk品質低下がある。token削減だけを最適化すると、検索で該当sectionを特定できず、最終回答の根拠性が下がる可能性がある。
評価方法
- markdownとtextのtoken削減率
- 見出し・表・link保持率
- RAG top-k recall
- 引用元sectionの復元率
- 検索結果の重複率
- 文書変換時間と費用
- 変換失敗・空出力率
- format混在indexの件数
ロールバック
conversion optionを外し、既定のmarkdown出力へ戻す。textで作成したembedding indexを既存indexへ混ぜている場合は、format別に再構築する。元文書とmetadataを保持しておけば再変換できるため、変換済みtextだけを唯一の正本にしない。
編集部分析
plain textはtoken効率と単純処理に向くが、RAGではMarkdownの記号自体が構造metadataとして働く。出力formatは表示上の好みではなく、検索と引用のデータモデルを変える設定である。用途別に二つの変換結果を持つ方が、一律text化より合理的な場合が多い。
実務チェックリスト
- [ ] markdownとtextを同じ文書で比較した
- [ ] 表・link・見出しの保持率を測った
- [ ] formatをindex versionへ記録した
- [ ] 元文書とmetadataを保持した
- [ ] RAG recallと引用復元を評価した
- [ ] 既存indexへformatを混在させていない
- [ ] markdownへ戻す手順がある