Anthropicは2026年2月5日、Claude APIへデータ所在地制御を追加した。POST /v1/messagesでinference_geoを指定し、globalまたはusを選択できる。応答のusage.inference_geoから実際の推論地域を確認できる。
対応モデルで米国内推論を使う場合、入力、出力、キャッシュ書き込み、キャッシュ読み取りを含む全トークン料金に1.1倍が適用される。地域要件を満たすには、コード、ワークスペース設定、請求予測を同時に変更する必要がある。
何が変わったか
inference_geo: "global"は可用性と性能を優先して利用可能な地域へルーティングする既定値である。"us"は米国のインフラだけで推論を実行する。ワークスペースではallowed_inference_geosとdefault_inference_geoを設定でき、個別リクエストの逸脱を制限できる。
変更前後の差
| 項目 | 従来 | 新しい制御 |
|---|---|---|
| 地域指定 | 組織単位の旧オプトアウト | リクエスト単位とワークスペース単位 |
| 確認方法 | 契約・設定中心 | usage.inference_geoで確認 |
| 料金 | 標準料金 | USのみは1.1倍 |
| 対応モデル | 一律ではない | Opus 4.6、Sonnet 4.6以降 |
| Batch | 固定的 | 各リクエストで指定可能 |
誰に影響するか
米国内処理を契約・規制要件にする金融、医療、公共、法務関連のシステム、顧客ごとに所在地要件が異なるSaaS、Priority Tierを利用する高負荷環境に影響する。Amazon BedrockやGoogle Cloudではこのパラメータが使えず、各プラットフォームの地域方式を使う点にも注意する。
期限
強制移行期限はない。旧来の米国内ルーティングのオプトアウトを利用していた組織は、ワークスペース設定へ自動移行され、コード変更なしで制約が維持されると案内されている。ただし設定と実際の応答を確認する必要がある。
必要な対応
データ分類ごとにglobalとusの選択基準を定義する。法務要件がない処理まで一律にusへすると、費用と容量消費が増える。モデルが未対応の場合は400エラーになるため、対応モデル表とフォールバックを実装する。
実装・移行手順
- 顧客、データ種別、業務ごとの所在地要件を整理する。
- 対象モデルが
inference_geo対応か確認する。 - ワークスペースの許可地域と既定地域を設定する。
- API要求へ
inference_geoを明示する。 - 応答の
usage.inference_geoを監査ログへ保存する。 - 料金計算へ1.1倍係数を組み込む。
- Batch APIでは各リクエストの地域を検証する。
- 400エラー時に未対応モデルへ黙って地域制約なしで再送しない。
失敗しやすい点
us指定だけで法的要件をすべて満たすと判断する- 未対応モデルへパラメータを付けて本番エラーを起こす
- ワークスペース既定と個別要求の優先順位を誤る
- 1.1倍を出力トークンだけへ適用する
- Priority Tierの容量消費増を見落とす
- BedrockやGoogle Cloudでも同じパラメータが使えると誤認する
リスク
地域をglobalへ誤設定すると契約違反につながり、usへ過剰設定すると費用と容量が増える。ログへ本文を残して所在地を証明しようとすると、別のプライバシーリスクを作るため、リクエストID、ポリシーID、usage.inference_geoを中心に証跡を設計する。
評価方法
- 所在地ポリシーと実際の
usage一致率 - 未対応モデルの400エラー率
- US推論による費用増加率
- Priority Tier容量の消費差
- 地域別のP50・P95遅延
- ワークスペース設定逸脱の拒否件数
- 監査でリクエスト地域を追跡できる割合
ロールバック
機能障害時は地域ポリシーを無効にせず、対象モデルを対応済みの固定モデルへ戻す。法務上usが必須の処理は、globalへ自動フォールバックさせず停止またはキュー待機とする。要件がない処理だけを別経路へ切り替える。
編集部分析
データ所在地は単なるAPIパラメータではなく、モデル選択、ワークスペース、料金、容量、監査を横断するポリシーである。最も危険なのは、可用性を優先した再試行で地域制約を外す実装だ。所在地必須と任意のワークロードを分離し、失敗時の挙動を事前に決める必要がある。
実務チェックリスト
- [ ] データ分類ごとの地域要件を定義した
- [ ] 対応モデルを確認した
- [ ] ワークスペースの許可地域を設定した
- [ ]
usage.inference_geoを記録する - [ ] 1.1倍料金と容量消費を予算へ反映した
- [ ] 未対応モデルの400エラーを試験した
- [ ] 地域制約を外す自動再試行を禁止した
- [ ] Bedrock・Google Cloud利用分を別方式で管理した